私たちの技術の特徴
マウスを用いて抗体を作製する技術は確立されています。現在上市されている抗体医薬の大部分はマウス抗体を改変して、アレルギーの原因となるマウス部分をヒト抗体で置換したキメラ抗体やヒト化抗体です。しかし、最近はマウス部分を含まない完全ヒト抗体が開発の主流になっています。ヒト抗体遺伝子を導入したマウスを用いるトランスジェニックマウス法や大腸菌に感染するウイルスを利用したファージディスプレイ法が完全ヒト抗体を作製する技術として開発されています。
イーベックでは、ヒト体内で抗体産生を担っている血液Bリンパ球から完全ヒト抗体を作製する独自の技術を開発しました。
私たちは出生後、感染症などによりいろいろな抗原に暴露され、そのつどそれらに対する抗体産生リンパ球が活性化し、それ以降メモリーBリンパ球として維持されています。つまり、Bリンパ球は種々の抗体産生リンパ球から成る抗体ライブラリーといえます。
EBウイルスはBリンパ球を増殖させ、抗体産生を誘導する活性を有しています。in vitroでは1週間前後で死滅するBリンパ球が、EBウイルス感染により半年以上にわたって安定に増殖するようになります。
イーベックでは、EBウイルスのBリンパ球増殖活性を利用して抗体を作製します。10~20mlの血液からBリンパ球を分離し、EBウイルスを感染します。増殖してきたBリンパ球から目的とする抗体を産生する細胞クローンを分離します。クローン分離は、希釈培養を繰り返すクローン培養法や目的抗体産生リンパ球をFACSを用いて選択的に分離するソーティング法を組み合わせて行います。細胞クローンを分離後はそこから抗体遺伝子をクローニングし、抗体産生用のCHO細胞へ抗体遺伝子を導入し、抗体を産生します。すなわち、EBウイルスは血液リンパ球から目的とする抗体遺伝子を単離する手段として用いるだけで、抗体標品にEBウイルスが混入する危険性はありません。
マウスを用いて抗体を作製する時には過剰な抗原で短期間刺激して、目的とする抗体産生リンパ球を誘導します。この場合には、抗原が過剰に存在するために、結合活性の低い抗体産生リンパ球も活性化されます。一方、ヒトの血液リンパ球は感染症などナチュラルな免疫過程を経て活性化されます。この場合には、少量の抗原で繰り返し刺激されるため、結合活性の高い抗体産生リンパ球のみが活性化されます。その結果、ヒト血液中には結合活性の高い抗体産生リンパ球が蓄積していきます。マウスを免疫する方法で作製できる抗体の結合活性は高いものでも10-9M前後に過ぎません。既に上市されている抗体医薬の結合活性もその程度です。一方、血液リンパ球をソースとしてイーベックが開発した抗体の結合活性は 10-11M前後であり、マウス抗体より100倍の高い結合活性を有しています。
抗体作製技術のほとんどが欧米の製薬会社の特許となっており、使用するためには多額のライセンス料を支払う必要があります。一方、EBウイルスを用いる抗体作製法は30年以上前から知られていますが、非常に難しい方法であると一般に考えられてきました。イーベックでは種々のノウハウを蓄積し確実に抗体を作製することのできる技術を確立しました。